≪24日、夕張市の「マウントレースイスキー場」などを運営する夕張リゾートは、廃業し破産申請すると発表しました。≫
夕張市議会議員今川和哉です。
夕張リゾートの件について、私も昨日知りましたのでニュースで出ている以上の経緯は知りませんが、ここに至るまでのまとめと出来事の記録、備忘録的に記事にしようかと思います。
まず、よく勘違いしやすい点として、「ホテル施設」と「運営会社」を分ける必要があると思います。
この点以下説明します。(また、この件では別に「所有者」が出てきます)
【ホテル施設について】
「ホテルマウントレースイスキー場」元々は炭鉱会社が建てた施設であります。
(スキー場は1984年に夕張市が取得しているようです)
松下興産が買収・夕張市と共同で開発し、1991年、ホテルを含むスキーリゾート施設としました。
(松下興産は、パナソニックグループからMID都市開発株式会社を経て、現在の関電不動産開発株式会社に吸収されています)
その後、2002年に夕張市が買取りを行います。この価額が妥当なものか、当時の市議会ではひと悶着あったと聞いています。(26億円で購入)
市が買取りをすることが正解だったのか、今となってもわかりませんが、夕張のスキー場を失くすな!と大きな市民運動があった結果でもあるとのことです。
夕張市の破たん後、自己予算での運営や第三セクター方式ができなくなったことから、所有は夕張市のまま「指定管理者を公募」します。
そして、2007年から10年間の契約で「加森観光」が指定管理をすることとなりました。
このとき運営会社として子会社が作られ、雇用を行い索道業許可等を取得したのが「夕張リゾート」であり今回の破産申し立てに至る会社なわけです。
指定管理者は一部の不採算施設を途中で返却(指定管理の返上)しつつも、ホテル等は10年間の指定管理期間を満了することとなり、依然自己での運営が不可能な夕張市は、ホテル施設(レースイ・スキー場・合宿の宿ひまわり・ホテルシューパロ)を売り出しすることとなりました。
なお、途中で不採算施設として返却された施設のひとつが「夕張鹿鳴館」であり、返却されたところで管理ができない夕張市は、このあと運営を申し出た道内の法人に無償譲渡しております。夕張鹿鳴館だけは、ホテルよりずっと先に夕張市の手を離れているわけです(2009年のことです)
・売却に至る議事録等の詳細はこちらに書いてるので↓
【詳しく知りたい方はどうぞ】過去記事
指定管理が終了に至る2017年、夕張市がホテル等施設の売却を行うにあたっては、まず仲介業者を公募し、その後、2回売却先を公募しております。
1回目の売却公募は交渉権者がキャンセルし、指定管理満了期限ギリギリの日程にて2回目の公募を行いました。
このとき、最も高い金額で公募に参加したのが「元大リアルエステート」だったわけです。
【よく話題に出される転売禁止条項について】
公募の締切後、第三者選定委員会と議会の議決を得て、元大リアルエステートにこのホテル等を売却することとなりました。
なお、ホテル所有者は、このとき市が売却した「元大リアルエステート」の関連会社、「元大夕張リゾート株式会社」から現在も変わっておりません。
なので、いわゆる転売条項について議論の意味はないのです。(当時の質問者の私が言うのも何なのですが)転売禁止条項をつけていたとしても全く結果は変わっておりません。
会社としては「不動産」の「売却」をしていないので、禁止条項にもあたりません、仮にさらに強力な買い戻し特約等をつけていた場合でも同様です。
会社登記や不動産取引に携わっていない方には、ちょっと難しいかもしれませんね。
会社履歴:夕張リゾートホールディング
https://ttzk.graffer.jp/corporations/4010601051008
今回破産を宣言したのは運営会社の「夕張リゾート」であり、指定管理時代の加森観光から、元大リアルエステートを経て香港のファンドが引き継いだ会社です。
そして、夕張市がホテル等を売却したのは、上のリンクの会社、「元大夕張リゾート」→商号変更して「夕張リゾートホールディング株式会社」です。現所有者もこの会社のまま変わっておりません。新聞等で「4施設を売却」としているのは一般にもわかりやすい表現であり、法律的には不動産所有法人の経営者が変更になったということになります。(これも簡単に言うと、ですが…)
そして、今年に入りこのコロナ禍での休業からの今回の件に至ります。
修学旅行やインバウンドでの収益が柱であったホテルなだけに、この情勢では収益が出なかったのだろうと想像できます。
・ニュース内の市長のコメント
厚谷市長の発言はかなり不用意でしたね。
詳しい経緯が何かあるのかもしれませんが、この発言を切り取られては、経営の苦しい市内企業に追い打ちをかけているように思われてしまいます。
例えば私の司法書士事務所や宅建業は市内唯一ですが、経営できなくなったら市民が不便になって不誠実と言われるのでしょうか?と思わざるを得ない発言です。
経営状況を報告したら市が経営を助けてくれるのなら別かもしれませんが。
・今後は。。。
不動産所有会社の動向を市も注視していく必要があります。
道義的には施設や資産を売却し再建と負債の返還に充てていくべきですが、負債は子会社のもので所有会社は知らん存ぜぬ、で新たな運営子会社を立ち上げる。ということもできる状況です。
そして休止期間が長引かないよう、施設売却するのであればスムーズに進めるよう、市も情報交換や広報に積極的な協力をするべきです。
ただ、最終手段としても、スキー場をまた市が買い取るという手段は取るべきではないと思っています。今の夕張市に運営は不可能です。
観光業が厳しい中、ホテル用途以外での売却や、スキー場だけでの再開等、民間の所有とはいえ行政も様々な手段と支援策を考えつつ、今後を考えていかなければならないでしょう。
マルハニチロ夕張工場の撤退に続きこの夕張リゾートの廃業、そしてまだコロナ感染症が続く中、夕張市にとってはまた大きな試練となります。
夕張市議会議員 今川和哉
(12月26日一部加筆修正)