夕張市議会議員今川和哉です。今回は3月の定例市議会の私の質問についてまとめます。
前編ということで、2回に分けて記載します。市長の行政執行方針に対する質問となります。
大綱質問「まちの将来像を描く」
(1)コンパクトシティゆうばり
≪今川和哉≫コンパクトシティゆうばりについて質問いたします。
本市の「コンパクトシティ」計画は、まちの限られた資源を集中し、市の中心部に公共施設等をつくりながら、中心部への移住を促し、持続可能な都市を実現しようというもので、平成24年に、その基本的指針が策定され、集約型の都市計画が進められてまいりました。
急速に人口減少が進む中、広い行政範囲を有する当市が、都市の規模と人口の不整合による様々な課題を解決するため「都市の集約」「コンパクトなまち」を作っていくという主旨には、当然賛同するところです。しかし全国でも複数の自治体がコンパクトシティ、都市の集約に取り組んでいる事例がありますが、中々行政が思う通りの成果をあげられている自治体は少ないように思われるのが現状です。
本市のコンパクトシティ計画はまだ道半ばであり、市民にとって本当にためになるまちづくりができるかどうかは、これまでの事業効果の検証と今後の事業構築にかかっていると考えます。
そこで、市長に質問いたしますが、本市において、コンパクトシティを推進するための事業や、これまでの取組の効果と今後の課題について伺います。
≪答弁:市長≫
コンパクトシティゆうばりに関するご質問にお答えいたします。
コンパクトシティの推進につきましては、これまで清水沢地区の市営住宅再編事業により、市営住宅の管理戸数の減と、当該地区における入居率の向上及び真谷地地区における市営住宅集約事業により浄化槽3か所廃止に伴う維持管理コストの減などの効果があったところでございます。
また、南清水沢地区を中心に転入者の居住場所の確保のため民間賃貸住宅の建築促進施策を実施したことによりまして、本市の過去10年間の人口減少率が市全体で約31%でありましたのに対しまして、南清水沢地区は約10%と人口減少の抑制に効果があったところでございます。
令和2年3月1日には拠点複合施設りすたが供用開始されたことによる交通の結節機能のほか、市民活動・交流の拠点施設としての役割を担っております。
今後の課題といたしましては、市政執行方針でも述べさせて頂きましたが、まちの将来像である安心して幸せに暮らすことのできるコンパクトシティゆうばりの実現に向けて取り組みを進めているものの、想定を上回る速さで進む人口減少、公共施設やインフラの老朽化による利用者の利便性や安全性確保の必要性と、行政コストの増加が見込まれること、そして市内で土砂災害の危険性が高い区域が多数指定されていることへの対応といった課題がございます。これらの課題に対応する方針を定めるため、市民の皆様や有識者により組織いたしました計画策定委員会の意見を頂きながら、令和2年度に夕張市まちづくりマスタープランの改訂と公共施設などの都市機能や居住環境の充実・誘導を図るための指針として、夕張市立地適正化計画の策定をしたところでございます。
課題の解決に向けまして、令和3年度にインフラを含む公共施設全体の老朽化対策とともに都市機能の具体的な施設に関する方策や拠点地区の形成に向けた検討を行ってまいります。
≪今川再質問≫
答弁にありましたとおり、市営住宅の再編や交通体系の整備、拠点複合施設りすたの整備、また今後の診療所の新設、これらがひと段落ついたところで今後考えなければならないのは市役所庁舎の問題ではないでしょうか。
庁舎は多くの市民が立ち寄り、働く職員も多い市役所という施設です。まちづくりの観点から見ても、庁舎建物の耐震性という市民・職員の安全面から見ても、この問題は避けられない課題である…そのことは明らかだと思いますが、この庁舎の問題についてはどのように考えているか、市長にお伺いします。
≪答弁:市長≫
ただいま議員からご質問がございました、この市役所本庁舎でございますけれども、建設後43年を経過しているほか、耐震性能が基準値を下回っており、震度6強から7の大規模地震の発生により倒壊の可能性が高いとされております。
平成30年9月に発生しました北海道胆振東部地震により、近隣自治体が甚大な被害に見舞われたことを踏まえまして、本庁舎耐震化につきましても、現庁舎の耐震工事か改築かについて、一定の方向性と対策のためのスケジュールを検討してまいりたいとい考えております。
≪今川再質問≫(全体的な流れから「改築」は移転新築を含む概念としてお読みください)
答弁において、庁舎の耐震化または改築ということで検討されている、検討を進める可能性があるという答弁かと思いますが、市庁舎の耐震化というものは現実的ではないという印象を受けるものですが、この庁舎を耐震化するという考えもあるということでよろしいでしょうか。
≪答弁:市長≫
庁舎の耐震化につきましては、ただいま議員からご質問がありましたとおり、一つの方法として、いわゆる経費の算定等を行わなければならないものですから、そういった中でこの本庁舎の耐震化についても検討をしていかなければならない、そのように考えております。
≪今川再質問≫
現在この庁舎があるのは、まちの北側ということで、市の中心部に公共施設を作るというコンパクトシティ計画とは少しずれるのかなという印象を受けるところです。この庁舎を耐震化するのか、それとも移転によって中心部に公共施設等を集めていくのか、これらの指針が作られていく今後のスケジュールとしてはどのようなものになるとお考えでしょうか。
≪答弁:市長≫
今後の検討のスケジュール感でございますけれども、これは今後のことになりますので現段階ではまだお答えできる状況にはございませんが、少なくともまず市役所の中で耐震化、それから改築という方向にむけてどのような準備が必要かということの作業は進めていかなければならないときが来ていると考えております。
(今回の質問を終えて)
マスタープランの見直しが行われ、夕張市立地適正化計画が制定されたこのタイミングで、市の庁舎の議論が未だ宙に浮いている現状は市が抱える大きな問題の一つだと感じており質問にも盛り込んだものです。しかし、各種計画が既に進み、数年前からコンパクトシティを推進しているこの状況でまだ移転と耐震化を並行でこれから考えるというようなレベルの答弁が出てくることにはかなり困惑いたしました。
庁内の議論を詰めるということは(遅いですが)大切なことかもしれませんが、中心部への移転を考える、立地は検討を進める。これくらいは市長が判断して職員に指示してもいい話ではないかと思うところです。厚谷市長も就任後折り返しです。そろそろ、職員や総務省のご機嫌伺いではなく市民のほうを見て「市長はこういう政策をやるんだ」という意気でリーダーシップを見せてほしいと願いつつ、今後の質問を行いたいと思います。
(余談)
・コンパクトシティの理念について
夕張市の場合は、炭鉱開発の事情から山中の南北に長い集落が形成され、最盛期には12万人もの人口を有し、その居住インフラが維持されてきました。
人口が急減し7000人台になった今、水道や道路の総延長の管理補修、除排雪の人手、これらを考えたとき、インフラの縮小を積極的な手段で進めなければ税収と維持管理コストの比率から見て立ち行かなくなることが明白だろうというものが理由の一つです。これは(後半)の質問にも出てくる議論です。
ただ、「税金によるまちの管理コストは人口が一極に集まったほうが低コスト」という考えについて、あまり広く適用するのは慎重になるべきだろうなと思っています。
国や道府県単位でみたときには、適度な分散というものが絶対に必要だろうと考えるところです。
例えば北海道の人口と維持管理コストだけで見れば、札幌だけにまちを集めることも可能でしょう、しかし、北海道は農家も多くあり、この広い面積は1次産業に大きな貢献をしています。
ものづくりの面では工場も大きな敷地が必要です。重工業は今後も国力の源ですし、数十年先を想定しても半導体やリチウムなどの工場は技術発展に欠かせません。
これら大きな敷地を必要とする1次産業・工場等と、そこで働く人たちが存在するのがいわゆる「地方部」であり地価の高い都市だけではできないことです。
都市は都市だけで成り立つものではなく、地方部には、全国の食べ物や工業製品を創り出し、上京する人の出生から子育て、教育を担っている面があります。
また、人が集中すると地価の上昇により保育のコストには悪影響を与えます。家族向けの居住面積が狭くなり、保育園も建設コストだけでなく相当高い賃借料を支払う必要があります。
少子高齢化、保育園待機児童の問題も都市集中が一因にあるのではないでしょうか。と、東京に行ったとき一等地のオフィスビルの中にある保育園を見て感じました。
ここらは財源議論や地方分権の議論からつながるところですが、今回の行政のランニングコストという面から見ても、良い都市と地方の在り方を模索しなければならないものと考えます。
令和3年第1回定例大綱質問(後編)では、大綱質問の続きをアップします。
今川和哉