夕張市議会にて、5月11日と12日にかけて、道南方面へ視察がありました。
本研修会は夕張市が財政再建団体となってから初の宿泊予算を伴う議会行事となります。
今までも車以外の支出が発生しない日帰りの視察はありましたが、予算が付く宿泊を伴う議会視察はありませんでした。
個々の政務活動費は現在もありませんが、今回初めて、夕張市議会としての視察が予算化されたものです。交通費については、事務局職員の方達に市の車を運転していただき乗り合わせ、道南函館方面を視察しました。
【そもそも視察っているの?何しているの?という話】
平成32年度に供用開始が予定されている拠点複合施設について、去年から検討委員会等により計画が練られており、今年度からは具体的に設計に入ることとなります。
今回の目的は、その建設に向けて、すでに活用されている他市町の施設について、良い点改善点など様々な面で参考にさせていただこうというものです。
それで、議員が視察へ行く意味は?という点ですが、議会は予算の議決権を持っている組織となります。
市担当者の「こういった施設を建てるために、いくら税金を使うことになるので、この部分に予算をつけたいんだけど」という提案に対して、「それでいいよ」「これはダメだよ」と言える決定権を持っているのです。
そういった決定権を持っている議会の議員が≪他の施設を見たりもせず、自分の思い込みと行政側の言い分だけで判断して議決する≫状況だと問題です。
その面では、こういった公式の事業で議員が全員参加し、他の施設の運用や担当者の実際の説明を聞くことができて良かったのではないかと感じています。
経費としては議員1名につき1万円程度の宿泊費予算(年1回)ですが、この視察に関する予算化には議会事務局、財務担当者が相当苦労したということです。
こういった事情もあり、当然税金を無駄にはできないという思いが全員にあります。視察は予定時間が足りなくなるくらい質問が出ていました。
視察予算がつくことのありがたみを忘れずに行きたいと思います。
余談ですが、例えば東京都議会は1名ごと月60万円、札幌市議会は会派に1名ごと月40万円の活動費があるようです。
このレベルの額だと、調査や政策立案についてシンクタンクのような外部の専門機関に委託するといった視察にとどまらない使い方もできるのでしょう。
是非皆様も自治体の議会議員の活動費の金額、使い方を調べてみてはいかがでしょうか?
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【北斗市総合文化センター かなでーる】
コンサートや展示会、図書館や公民館の機能を備えた北斗市の複合施設です。
資料の情報だけでは、当時の建設相場が違うにしても面積にしては建物施工の坪単価がずいぶん高くなっている印象を受けていましたが、中のホールの造りを見て納得できました。
ホールに相当のこだわりを持って施工したのかなと思います。大ホール小ホールがあり、建物施工額の半分以上はホールにかかっているのではないかと。
こういった既に長く使われてきている施設を見る点は、実際にどのように運営されているのか、使っている市民の反応はどうか、使い勝手はどうか、メンテナンスにかかるコストなど。
あと特に聞きたいのは、作る際にもっと気を付けておきたかった点や、良かった点です。
コストについては、やはりホールの音響などの設備交換が大きな金額となったという話です。
交換にかかるコストや、その財源を将来的に捻出することも想定しつつ作らなければなりません。
こちらランニングコストも年間7000万円ほどはかかるということで、当市で計画する予定の施設はここまで大きくないにしろ、建設費だけにとどまらない費用を考えて議決しなければなりません。
文化面にこだわっているようで、「ここまで必要なのか?」と思われるくらい良い音楽設備を導入していました。
それが功を奏して、市外の団体にも使ってもらえたり、地域の文化団体を育てることができて良かった。と話していました。
「半端に必要最低限の物を作るより、これだけは負けないものがあると良いのではないか。」というアドバイスが印象に残りました。
大ホールです。
当然、この規模のものは大きなコストがかかっているようでした。
ランニングコストや、使用する団体の規模を考えながら費用対効果を考えて設計していかなければなりません。
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【キラリス函館】
函館駅前にできた新しいランドマーク施設です。
1~2階は商業施設なのですが、3階は科学館のような施設、4階は子育て施設機能を備えており、そちらを案内していただきました。
建物とメディアコンテンツが一体になっている面は参考にすべきでした。
まず「建物ありき、そこで何を提供するかはできてから」では良くありません。
ここでは例えば、単に廊下があるだけではなく、廊下に映像が投影され、その上を歩くような設備があったり、映像コンテンツを通して3階と4階が天井と床でつながるような造りも面白さがありました。
あまり費用の大きなものはできなくとも「作られたあとどう遊んで使い楽しんでもらうか」を建物建設の段階から企画していく発想は必要でしょう。
民間では当然のようですが、建物の予算が先行する行政では見落としがちです。
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【函館 蔦屋書店】
お手本としては非常にハードルが高い施設ではありましたが、「民間資本による最先端の施設」を見ることができました。
単なる本屋ではなく、住民のための空間を提供し、地域活性化を担えるような施設です。
利用者が集まれる場所など、空間の造り方はやはり民間事業者が考えつくして作ったものですね。
オープンスペースも数週替わりで常に活用されているとのことで、にぎわいがありました。
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【おわりに】
視察で私がなるべく見るようにしている点について
「これはうらやましいな」と思うところを見るだけでは、あまり意味がないことが多いです。
真似するにも二番煎じになったり、予算がかかりすぎたりするためです。また、成功しているように見せることは簡単にできるからです。
むしろ、これは失敗だなと思う部分を探して見たり、金額などの数字的な部分を見ると非常に参考になると思っています。
昨年度、複合施設の検討委員会で、木や自然の素材を活用してほしいという意見が多く出されておりました。
今回見た施設にはそういったコンセプトの部分はなく、近代的・機能的な素材感の場所でした。
この前打ち合わせで使わせてもらった東京ガーデンテラスのヤフーロッジがまさに「木」というスペースで、今のところ、私のイメージに近いアトリウムデザインはこんな感じです。
皆さんはどんなものをイメージしていますか?